Vゾーンの大きさに関係してくるのが、シャツの襟の大きさです。シャツには何種類もの襟の形があり、Vゾーンの大きさによってふさわしい襟の形も決まってくるのです。そして、ネクタイの幅や結び方によっても、Vゾーンのバランスは大きく変わってきます。また、スーツを着る人の身長や体型によっても、Vゾーンの大きさは異なってくるのです。つまり、Vゾーンはシャツやネクタイの色や柄ももちろん、スーツ全体のアイテムと切っても切れない関係で結ばれているのです。本堂のサブタイトルでつけた男と女の関係もそう。ネクタイを男性とするなら、シャツは女性でしょうか。お互いのバランスが大切なのはいうまでもありませんが、2人の間だけでなく、周りと良い関係が築けないとうまくいきませんよね。もっとも、最近では結婚しない(=ノーネクタイスタイル)もずいぶん認められるようになってきましたが。ではそのVゾーン、あなたは何を重視してコーディネートしていますか?
ひと昔前は車内の冷房も弱く、ない場合は窓からの風だけ、といった状態、デパートも映画館も適温だったように思える。その頃を手繰り寄せてみると、ちゃんと夏服を着ていた。袖なしのスーツ、半袖のワンピース、ボレロ付きのサマードレス、靴も白、ベージュ、サンダル(そういえばサンダルを履かなくなった)、バッグもストローバッグや籐のカゴ型のもの、革なら白、布ならキャンバス地の白いもの、といったふうに楽しんでいた。それはまさに夏を楽しむおしゃれだった。夏が終わると手入れをして、次の夏までしまっておく。それが今ではオールシーズンのものがクローゼットに年がら年中収まっている。もちろん効率がいいから良いのだけど、自分の目に新鮮さがないのだ。
「上下同一の素材で仕立てた服」を表す英語ならば、別にちゃんと存在する。「ディトーズ(EはS)」である。「ディトー」といえば、ジェリー・サッカー監督の映画『ゴースト』(一九九〇年)で、女が「アイーラヴーユー」と言うのに対して男が「ディトー(同じく)」と答えていたことから「愛の名セリフ」の仲間入りしてしまった言葉であるが、まさしくその「ディトー」の複数名詞形なのである。「ディトーズ」、すなわち上下を揃いの生地で仕立てた服ならば、中世からずっと存在した。ただし、これから述べるチャールズ二世の衣服改革宣言以来、ディトーズはフォーマル度においてはかなり低い地位にあり、上下別々の生地、しかもボトムの色ハットップより淡めという組み合わせの生地で仕立てた服のほうが、格においてずっと上であったのである。「スーツ」には「上下(とヴェスト)揃いの服」という意味ももちろんあるにはあって、このタイプばかりを見慣れた現代人には混乱の種であるが、メンス・ウェアの歴史においては、「上中下、互いに関連をもたせながら違う生地で仕立てたワンセットの服」と理解しておいたほうがわかりやすいのである。「二間以上あるひと続きの部屋」、すなわち「スイートールーム」の「スイート」とは兄弟にあたる言葉、といえば、「違いはあっても、連続性をもつ1セットのもの」というイメージが理解していただけようか。だから、上中下すべて同じ素材でできたスーツは、わざわざその旨の断り書きが入ったのである。
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